研究概要 |
口腔内細菌により硝酸から亜硝酸が生成され、胃内の酸と反応することが、グレリン分泌に影響を及ぼすかをみるために、Wistar系雄性ラット(24時間禁食)に、亜硝酸水(0.1mmol/kg)を投与し、30分後に胃を摘出し、別系で16時間前にプロトンポンプ阻害薬(PPI:lansoprazole,30mg/kg)投与群も検討した。亜硝酸投与により、血漿グレリン値は有意に上昇したが(対照:487.7±34.1fmol/ml、亜硝酸:633.0±26.8)、PPI投与で、この上昇は抑制された(亜硝酸+PPI:535.9±17.8fmol/MI)。胃内グレリン量(対照:1783.7±62.8fmol/mg、亜硝酸:1722.1土89.8,亜硝酸+PPI:1832.9±119.6)、グレリン陽性細胞数(/mm^2対照:127.0±10.2、亜硝酸:123.5土8.o、亜硝酸+PPI:106.7±12.2)は、亜硝酸単独でも、PPI処置でも変化しなかった。つまり、口腔由来の亜硝酸が胃酸と反応し、胃のグレリン分泌を促進することが示唆された。酸分泌抑制でグレリン分泌は抑制されることから、亜硝酸と酸が反応して発生する一酸化窒素(NO)が口腔-胃相関による摂食調節に重要な役割を担っていると考えられた。一方で、強酸の胃腔は生体内で最もニトロソ化が起きやすく、NOによるニトロソ化がグレリンの転写調節に関与している可能性は高い。本研究では、マウスのグレリンプロモーター領域(exon1から5000bp上流)含有ベクターを強制発現させたAGS細胞にNOドナー(sodium nitroprusside)を添加し、ルシフェラーゼアッセイで転写効率を検討し、グレリン前駆体のmRNA発現に対するNOの関与を検討した結果、NOドナーの投与で、ルシフェラーゼ活性が非投与時の83.2%(p<0.05)に低下した。
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