研究概要 |
口腔由来の亜硝酸が、低pHの胃内で一酸化窒素(NO)を発生すると考えられるが、この胃腔内のNOのグレリン分泌への影響をみるために、Wistar系雄性ラット(24時間禁食)に、亜硝酸(0.1mmol/kg)を投与し、30分後に胃を摘出し、別系で16時間前にプロトンポンプ阻害薬(lansoprazole,30mg/kg, s. c.)を投与した群も検討した。亜硝酸投与により、血漿グレリン値は有意に上昇したが(p<0.05)、PPI投与で、この上昇は抑制された。胃内総グレリン量、組織標本中の単位面積当たりのグレリン陽性細胞数は、亜硝酸単独でも、PPI処置でも変化しなかった。以上より、口腔由来の亜硝酸が胃腔内の酸と反応し、胃からのグレリン分泌を促進することが示唆されたが、胃のA-like細胞の貯蔵量に影響するほどではないこともわかった。なお、酸分泌抑制で、グレリン分泌は抑制されることから、亜硝酸と酸が反応して発生するNOが口腔-胃相関による摂食調節に重要な役割を担っていると考えられた。一方、胃粘膜側の内因性のNOの役割を検討するために、神経型NO合成酵素nNOSの遺伝子を欠損したnNOSノックアウトマウスを用いて検討した。上部消化管では、このnNOSが、下部食道括約筋の弛緩、胃底部の弛緩による貯留能、幽門括約筋の弛緩を制御し、食道及び胃の運動機能に重要な役割を担っている。最近、様々な遺伝子の翻訳後修飾を制御するmicroRNAの存在が注目されてきたが、本研究ではnNOSノックアウトマウス胃におけるmicroRNA発現をmicroRNAマイクロアレイで解析し、miR-141は野生型マウスに比べ、ノックアウトマウスで8倍以上発現が上昇し、miR-491とmiR466は4倍以上上昇することがわかった。なお、ノックアウトマウスで2倍以上上昇したmicroRNAは27種、反対に半分以下にまで低下したmicroRNAは13種認めた。これらのmicroRNAがnNOS発現やnNOS由来NOによる胃機能を調節していることが考えられ、今後は個々のmicroRNAの反応や標的の検討をする必要があると考えられた。
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