マウスに給餌制限を行い、1日1回4時間給餌をおこなうと、給餌をおこなった時刻依存的に体内時計の位相が変化することが知られている。また、1日2回に分けて朝夕給餌しても自由摂食のマウスとほぼ同様の時計遺伝子の発現位相を保つことがわかった。しかしながら、朝と夕の給餌のうちいずれの給餌が体内時計の同調に寄与しているかについては不明である。そこで以下に2つの給餌スケジュールの実験を肝臓でのBmal1-lucのレポーター発現リズムを指標として行った。(1)1日2回の給餌スケジュールのうち、朝と夕の給餌時刻をどちらか一方の給餌時刻を固定し、他の給餌時刻を早めたり、遅くする。朝と夕の給餌時刻を移動させたとき、どちらの時刻の移動が時計遺伝子発現リズムに影響するかを明らかにできる。マウスの朝ご飯に相当する時刻の給餌時刻を早めたり、遅くすると肝臓のBmal1-lucのレポーター発現リズムの位相が大きくずれ影響を受けることが判明した。一方、マウスの夕食に相当する時刻の移動は殆ど影響を及ぼさないことが判明した。(2)朝夕の給餌量の量的変化がリズムの位相を変えうる可能性について調べた。そこで、朝夕の給餌量は2:2の同じ群、朝夕の給餌量をそれぞれ1:3や3:1に変化させた群の3群を用意した。マウスの朝食に相当する部分の給餌量を減らすと、体内時計の位相は夕食側に引っ張られることがわかった。一方、夕食の量を減らしたマウスは2:2の群と殆ど変わらなかった。以上の実験結果から、末梢の体内時計の位相を整えるには給餌刺激が重要であり、さらに、マウスの朝食に相当する時間帯の給餌が正常な体内時計の位相を維持するには重要であることがわかった。
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