脳障害時のヌクレオカインHMGB1の脳内動態が詳細に検討された。つまり、正常脳細胞においては、殆どのHMGB1は神経細胞あるいはグリア細胞の核内、特に核小体に局在していること、一定時間の脳虚血によって大きく、4つのパターンの局在変化を示すことが明らかになった。一つ目は、核内においてほぼ均質に分布していたHMGB1が、レンコンの断面様に非存在部位を作って再分布する様式を示すタイプ、二つ目は、核膜部位に凝集塊を作る形で集積するタイプ、三つ目は、虚血の極く早期から細胞質内に顆粒状に分布移動するタイプ、四つ目は、均一な細胞質分布変化と細胞収縮を伴うタイプであった。これらの四つのタイプは、脳神経核の特定の部位に見られる傾向があった。上記の変化は中大脳動脈2時間閉塞後に再灌流し、その2時間後に得られた所見である。上記のHMGB1局在変化を生じた細胞の細胞外部位には小か顆粒状のHMGB1陽性構造共焦点レーザー顕微鏡による観察では多数見出され、細胞外放出像をとらえたものと考えられていた。Macintosh tissue chopperで作製されたラット海馬スライスを用いて、シェイファー側枝の高頻度刺激により、CA1領域にLTPを誘導した。この時に回収された灌流液中のHMGB1をElisaとウエスタンブロット法で測定を試みたが、両方とも検出感度以下のレベルであった。従って、LTP時にHMGB1の放出が顆亢進する実験的証拠は、今回の実験条件では、得られなかった。
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