研究概要 |
1)カルモジュリン(CaM)とミオシンVの共発現によって、nativeなミオシンV複合体をSf9細胞で作成させた。基本的には作成可能であったが、必ずしも定量的に十分な精製標品が得られなかった。その理由としてはCaMの結合量が必ずしも化学量論的でなかった点が挙げられる。これを解決する策として、別に大腸菌で作成したCaMをミオシンVの粗抽出液に加えて結合させる方法を取った。但し、化学量論的な結合が十分でないと、凝集が強くなることがわかった。20年度における、原子間力顕微鏡での観察のために、効率的な作成の理論的な根拠が得られた。 2)上記の標品をもとに、シンタキシンのアイソフォームとの定量的結合を表面プラズモン共鳴法で解析した。結合は定量的で、結合の解離定数については1A,2,3の間に差がないことがわかった。しかしすでに結合の絶対量は1Aが2,3よりも多いので、蛋白質の一部構造に結合抑制部位があることがわかった。 3)作成したミオシンVのシナプスでの役割について引き続き解析した結果、ミオシンVとアクチンの相互作用は、シナプス後部(樹状突起棘)の特異蛋白質ドレブリンによって阻害されることを証明した(Ishikawa et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 359,398-401)。この結果は、脳から精製したミオシンV分子と差がなかったことから、量的には少ないものの、nativeな分子が一定の比率で得られていることがわかった。
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