早期応答遺伝子の1つであるId2の血清刺激による遺伝子発現誘導が転写因子RFX1に依存していることをこれまでに見いだしている。本研究の目的は、RFX1を介したId2遺伝子の発現誘導系を活用して血清中に存在する新規の増殖因子を同定することにある。本年度に得られた成果は以下の通りである。 1)ld2遺伝子発現の誘導に関わる細胞内シグナル伝達経路の探索 血清にはPDGFやリゾフォスファチジン酸(LPA)などの増殖因子が含まれているが、いずれも血清飢餓状態のNIH3T3細胞においてId2遺伝子の発現を誘導できない。線維芽細胞での血清刺激によるId2遺伝子の発現誘導に関わる細胞内シグナル伝達経路を明らかにするために、Id2の血清応答配列を介したレポーターを用いて各種阻害剤の影響を検討したところ、チロシンキナーゼ阻害剤、JNK阻害剤、NF-KB阻害剤、PI3キナーゼ阻害剤、TGFβキナーゼ阻害剤によりレポーター活性が50〜60%程度抑制されたが、PKA阻害剤、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤、アクチン重合阻害剤、p38阻害剤、MEK阻害剤ではほとんど影響がなかった。 2)RFX1によるId2遺伝子の発現誘導に関わる補助因子の探索 ヒト胎児腎臓由来のHEK293細胞において、血清刺激によるId2遺伝子の発現誘導が、転写因子c-Mycとセリン・スレオニンキナーゼの1つであるPim-1の相互作用に依存するという最近の報告をもとに、Pim-1がRFX1が相互作用してId2遺伝子の発現に関わっている可能性について、IP-WB法、ChIP法などを用いて検討したが、可能性を示唆する結果は得られなかった。
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