平成20年度は、各種発現ベクターを用いた遺伝子相同組み換え技術・遺伝子安定発現制御細胞の作製技術を創薬スクリーニング系へ応用した癌治療薬開発モデルの構築を念頭において、アッセイ系のモデル標的分子(治療標的候補分子)となる癌細胞の発生、増殖等にかかわる癌関連分子の探索・機能解析を中心に行った。 (1)モデル標的分子の探索とその分子経路の解明:癌で発現上昇する標的分子の安定的な機能阻害・亢進系の構築は治療薬開発に直結するが、あわせて薬剤の副作用の軽減にむけた正常臓器での発現を考慮した最適の標的分子の抽出が必要である。そこでヒト癌組織および正常34臓器の遺伝子発現データベースを参照して癌細胞株および癌組織で共通して発現上昇し、生命維持に重要な臓器でほとんど発現を認めない、いわゆる癌-精巣(胎児)抗原をコードする遺伝子としてDLX5など複数の癌特異的な標的分子を引き続き同定し、それらの分子経路の阻害化合物の開発に向けた機能解析を進めた。結果、これらの標的分子が関わる肺癌の発生・悪性化(増殖・浸潤)機構を明らかにした。またこれらが癌バイオマーカーや免疫療法の標的となる癌抗原であることをあわせて明らかとし、臨床応用における用途、有用性を広範な視点から確認した。 (2)モデル標的分子の安定発現制御技術を用いた創薬スクリーニング系の構築:標的分子の安定的な発現阻害・亢進系を用いて作製した細胞の表現型の観察、下流・関連遺伝子の探索を行うとともに、質量分析法を応用した下流・関連蛋白と相互作用分子の探索、細胞内動態の検証等を進め、創薬スクリーニング系の構築を進めた。
|