自己免疫性疾患は、全身性エリテマドーデスなどの全身性のものと、臓器あるいは標的特異的なものに大別されるが、いずれも本来は抑制されている、自己の成分に対する免疫反応が起ることが根本的原因である。しかしながら、自己の成分に対する免疫反応抑制(免疫寛容)が誘導、成立する機構並びにその破綻については未解明な部分が多く、抜本的治療法が確立されていない。なかでも、臓器特異的な疾患について、免疫寛容の誘導機構とその破綻による発症機序を解明することは、全身性の疾患を理解し、その原因追究と治療法の開発にも重要かつ有効な情報を提供するものと期待できる。 本研究は、自己免疫反応を抑制する抗原特異的Treg細胞が、TCR-Tgマウスにおいて観察された大規模な3次リンパ組織様構造において誘導されているのか、このTreg細胞に自己免疫性胃炎を抑制する能力あるかなどを検証し、治療目的の応用可能性を検討する。とくに、Tx-AIGでは不完全な3次リンパ組織様構造しか形成されず、Treg細胞は誘導されないのに対し、TCR-Tgマウスでは大規模な3次リンパ組織様構造が誘導されるとともにTreg細胞が誘導ことに着目し、この2つのモデルの比較やサイトカイン、ケモカインの投与、抑制等によって、効率的にTreg細胞を誘導する方策を検索する等、この3次リンパ組織形成過程が自己免疫反応を制御するための新たな標的として、自己免疫疾患の治療法開発に結びつけ得るかの探索を目的とした。その結果、NFκBをはじめとする多くの転写因子群が、2次、3次リンパ組織のダイナミックな構築変化・形成による微小環境の影響を受け、時には冗長な、時には相反する機能を発現し、その制御を複雑化していることが判明した。同時に、これらの因子の発現が微小環境形成に影響を与えていることも明らかになった。
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