研究概要 |
申請者らは2005年にHRASの生殖細胞系列での変異を先天奇形症候群であるCostello症候群で同定した(Aoki et.al., Nature Genetics, 2005)。また2006年にcarcio-facio-cutaneous(CFC)症候群の原因がKRAS, BRAFの遺伝子変異が原因であることを報告した(Niihori, Aoki et.al. Nature Genetics, 2006)。申請者らの発見がブレークスルーとなり、RAS/MAPKに異常を持つ先天異常症という新しい疾患概念が確立した。本研究の目的は、これまでの細胞ベース・マウスベースとは異なる、ヒト発生異常の表現型の臓器別・stage別の詳細な情報と遺伝子の機能・シグナル伝達マップを包括的に網羅するヒト発生異常のデータベースを構築し、データベースに基づいたプロテオーム解析(遺伝子発現タンパクの網羅的解析)をおこなうことによってMCA/MRの原因遺伝子を革新的な探索法を開発しようとするものである。申請者らは、これまでにNoonan類縁疾患250人を収集し既知の原因遺伝子PTPN11, HRAS, KRAS, BRAF, MEK1, MEK2の包括的遺伝子解析を行ってきた。今年度はPTPN11, HRAS, KRAS, BRAF, MEK1, MEK2陰性のNoonan症候群22家系とCFC症候群30人に対してSOS1遺伝子解析を行ったところ、3世代の家系を含むヌーナン症候群2家系とCFC症候群3人に遺伝子変異を同定した。ヌーナン症候群とその類縁疾患はシグナル伝達経路であるRAS/MAPK経路の異常により起こることが明らかになり、私達はこの新しい疾患概念をRAS/MAPK症候群と呼ぶことを提唱した総説を発表した。また遺伝子変異と表現型・シグナル伝達での役割を包括的に記したデータベースを構築中であり、その一部をホームページで公開を開始した。
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