miRNAの面から食道扁平上皮癌、胃癌の発生・進展機構を明らかにした上で、これらの癌に対する新しい個性診断系を確立することを目的として、本年度は以下の通り実施した。 1)胃癌および正常胃粘膜における網羅的miRNA発現解析 約250miRNAのプローブを搭載したマイクロアレイを用い、胃癌および正常胃粘膜の新鮮凍結組織を材料としてmiRNAの発現を解析した。その結果、miR-21をはじめ約30のmiRNAが胃癌と正常とで有意に発現レベルが異なっていた。さらに、臨床病理学的事項とmiRNA発現パターンとの関連を解析したところ、組織型、深達度、転移の有無、予後と有意な相関を示すmiRNAセットを見いだした。 2)胃癌におけるmiRNAの標的遺伝子の解析 上記で抽出された癌で特異的な発現態度を示すmiRNAに関しては、miRanda、TargetScan、PicTarを用いてその標的遺伝子の候補の抽出を開始した。想定されたいくつかの候補遺伝子とmiRNAの発現レベルの有意な相関を確認している。さらに、標的遺伝子として当研究室においてSAGE法で同定したREGIVやGW112などの胃癌特異的発現遺伝子に注目している。 本年度に得られたデータを基盤として、最終年度となる来年度には、食道扁平上皮癌におけるmiRNA発現および特異的発現を示すmiRNAのターゲット遺伝子の同定についての解析を進め、最終的な目標である病理診断への還元を目指す。
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