研究課題/領域番号 |
19659088
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
居石 克夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (70108710)
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研究分担者 |
古賀 孝臣 九州大学, 大学病院, 講師 (70380615)
中川 和憲 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (50217668)
岡野 慎士 九州大学, 大学病院, 医員 (10380429)
鬼丸 満穂 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (00380626)
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キーワード | 脱リン酸化 / フォスファターゼ / 細胞周期 / 癌抑制遺伝子 / ユビキチンリガーゼ |
研究概要 |
本研究は、リン酸化シグナルのオフ情報として「脱リン酸化」を捉え、その腫瘍病理における意義について検証する。そこで我々は、近年癌において高頻度にLOHが観察される部位にコードされることから、癌抑制因子としての機能の有無に注目しているタンパク質チロシンフォスファターゼ(DEP-1)について、このフォスファターゼ活性が癌細胞の生物学的特性・機能にどのような影響をあたえるか検討した。 まず培養肺腺癌細胞(A549)への野生型、不活性変異体型(触媒アミノ酸の変異体)DEP-1遺伝子導入による複数のそれぞれ安定発現株を樹立した。これらのクローンついて細胞機能変化を比較したところ、不活性変異体発現株の増殖速度に比べ野生型発現株では細胞増殖が抑制された。これら野生型発現株では、不活性変異体発現株に比して、細胞周期関連因子p27のmRNA発現には大差ないものの、タンパク発現レベルは、高い傾向が観察された。これより、DEP-1によるがん細胞増殖抑制は、p27分解系の抑制が関係していることが想定された。しかし、p27発現分解に関わるSkp2の発現は、野生型、不活性変異体型株で特に変化が観察されなかったことから、少なくともDEP-1によるp27の制御は、単にSkp2発現レベルに依存しない新たな系で制御されている可能性が推測された。従来より腫瘍増殖におけるp27レベルの調節は、Skp2発現で説明されているが、以上の結果は、追証の必要な部分があるものの、DEP-1のラォスファターゼ活性によるがん細胞増殖制御に、新たな機構の存在を示唆するものであり、フォスファターゼによる「脱リン酸化」は、今後の腫瘍細胞増殖の制御戦略の端緒となることが期待された。
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