本研究は細胞側因子と相互作用し、細胞内の物質輸送に影響を与えるJCウイルスのagnoproteinがオリゴデンドロサイトの機能障害を惹起させる。」という作業仮説を立て、agnoproteinを中枢神経に発現させるトランスジェニックマウスを作製し、JCウイルス感染によって生じる、多発性硬化症とは異なった機序で発症する非炎症性の脱髄のモデルを確立し、ウイルス感染後の脱髄病変の形成過程の機序を詳細に検討することを目的として以下の実験を行った。平成19年度は北海道大学においてJCウイルスagnoproteinもしくは後期蛋白質をloxP配列と共に全身臓器に発現させるコンストラクトであるpCALNL5-AgnoもしくはpCALNL5-JClateを作成し、これらのコンストラクトからベクター部分を切り離したDNAを作製した。国立循環器病センター・バイオサイエンス部・室長の荒井博士はこのDNAを、マウスの前核期受精卵にマイクロインジェクションし、その後偽妊娠しているレシピエントマウスの卵管へ胚移植を行い、自然分娩により出産させた。マウスのスクリーニングは北海道大学にて行い、最終的にagnoproteinのFOトランスジェニックマウスが3系統、late proteinのFOトランスジェニックマウスが4系統樹立された。現在北海道大学にてそれらの子孫を作製して、スクリーニングを行っている。またタモキシフェン反応性のCreリコンビナーゼを発現しているマウスも米国から入手し、現在子孫を作製している。
|