研究課題/領域番号 |
19659097
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
北中 千史 山形大学, 医学部, 教授 (70260320)
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研究分担者 |
立花 研 山形大学, 医学部, 助教 (10400540)
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キーワード | Warburg effect / mitochondria / energy metabolism / programmed cell death / glycolysis |
研究概要 |
正常の細胞は酸素存在下ではミトコンドリア呼吸(酸化的リン酸化)によりエネルギー(ATP)産生を行い酸素利用が不可能な状況では嫌気的解糖によりエネルギー産生を行うが、嫌気的解糖ではエネルギー産生効率が著しく低下する。一方、がん細胞は一般に酸素利用可能な状況でも嫌気的解糖を行う傾向(Warburg効果)があることが知られている。しかしながらがん細胞が何故このようにエネルギー的に著しく不利な代謝を好んで行うかは長年にわたって謎とされてきた。これに対して我々は同じATP産生メカニズムでありながらミトコンドリア呼吸がミトコンドリアを介する細胞自殺に重要な役割を果たしているのに対してサイトゾルで行われる解糖は関与していないことを発見し、その結果がん細胞が嫌気的解糖を好んで行うのは細胞死を回避しつつエネルギーを賄うための巧妙な戦略と理解できるようになった。また、ミトコンドリア依存的な細胞死は放射線や化学療法によるがん細胞殺傷に深く関わっていることから、Warburg効果はがんの治療抵抗性を与えており、Warburg効果をターゲットとした治療を行うことによりがんの治療抵抗性を克服できる可能性が考えられるようになった。そこで悪性脳腫瘍細胞を対象にミトコンドリアにおける酸素呼吸を促進するための方策を種々探索・検討した結果、植物に由来する天然物質の中に腫瘍細胞に対してミトコンドリア呼吸を促進する作用を有するものを見出した。重要なことに、培養悪性脳腫瘍細胞に対して化学療法薬剤とこの天然物質を同時に投与したところ相乗的な殺細胞効果が認められたのに対し、正常細胞に対する化学療法薬剤の毒性は増強されなかった。今後この天然物質が示す化学療法薬剤による殺細胞効果の悪性脳腫瘍細胞特異的な増強効果のメカニズム解明を試みるとともに、生体内での相乗的抗腫瘍効果の有無について検討を行う。
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