研究概要 |
我々が開発した経口投与可能な新規カテプシンK阻害剤NC-2300は、in vitroで分化誘導した破骨細胞の骨吸収を顕著に抑制し、閉経後骨粗鬆症の動物モデルである卵巣摘出ラットにおける全身性の骨粗鬆症を抑制することが明らかにされている。昨年度では、この新規阻害剤が炎症性骨疾患に及ぼす効果をラットのアジュバント関節炎モデルにおいて検討し、この阻害剤が骨破壊だけでなく炎症までも顕著に抑制することを見いだし、カテプシンKの意外な免疫機能の発見に成功した。本年度は、カテプシンK阻害剤が自己免疫性疾患を制御する作用点に関する解析を進めた結果、破骨細胞分化を促進するTh17細胞の抑制が重要な作用点であることが明らかになった。さらに、カテプシンKによるTh17細胞の制御機構を詳細に検討した。そして、自己免疫反応の初期に作動する自然免疫活性か受容体のうち、Toll-like receptor 9による樹状細胞の活性化経路として知られているNFkB, MAPK, IRFなどのすべての経路に障害があることがわかった。抑制される樹状細胞の機能としては、特に炎症性サイトカインと考えられているIL-6, IL-12, IL-23の産生が強く抑制されることが明らかになった。また、今回のアジュバント関節炎の実験において、カテプシンK阻害剤と作用を比較するために用いたビスフォスフォネート製剤の破骨細胞への作用を検討した際、炎症刺激を受けた破骨細胞には作用が弱いことを明らかにした。今後、この炎症性破骨細胞の性状についても解析を進める。
|