研究概要 |
CD109はGPIアンカー型の細胞表面蛋白である。本年度はわれわれが作製したCD109に対する抗体を用いて免疫組織法にて正常組織および癌組織における発現を検索した。その結果、CD109は正常乳腺、唾液腺、涙腺の筋上皮細胞、前立腺や気管支粘膜の基底細胞に発現していることが明らかになった。 次に肺の種々の癌組織におけるCD109の発現を調べた結果、扁平上皮癌(26例)の約90%に発現が陽性であった。一方、腺癌(26例)や大細胞癌(12例)での陽性率は20%以下で、小細胞癌(5例)では全例陰性であった。よってCD109は扁平上皮癌の良いマーカーになること、そして細胞表面蛋白という点から治療のターゲットにもなりうることが示された。 さらに種々の乳癌組織(88例)におけるCD109の発現を検討した。estrogen receptor, progesteronereceptor, human epidermal growth factor2(HER2)いずれか陽性の乳癌(53例)においてはCD109の発現は全例陰性であった。一方、estrogen receptor, progesterone receptor, HER2いずれも陰性(triple negative)で、かつ筋上皮マーカー陽性の症例(30例)では18例(60%)でCD109陽性を示した。筋上皮マーカー陽性の症例は基底細胞型乳癌と分類される群であり、今回の結果はCD109が基底細胞型乳癌の良いマーカーになることを示唆した。
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