酸性糖であるシアル酸は、糖蛋白や糖脂質の糖鎖末端に位置し、多くの細胞機能への関与が推察されている。とくに、腫瘍マーカーであるシアリルTnやシアリルLe^x、シアリルLe^aなど、癌関連抗原に多く見いだされるなど、癌との深い関連性が指摘されてきた。最近われわれは、Neu4シアリダーゼが他種のシアリダーゼと異なり、ムチン糖鎖を水解するユニークな基質特異性を持つこと、長さの異なるisofomを有し、long formの細胞内主局在はミトコンドリアであり、他は細胞内膜に局在することを明らかにした。 19年度は、大腸には、Neu4はほとんどshort formのみが存在すること、ヒト大腸癌ではNeu4発現が有意に低下することを検証した。また、癌細胞にこのシアリダーゼを過剰発現すると、細胞の運動能や浸潤能を低下させるなど、悪性形質が低下する傾向を示すが、遺伝子のノックダウンを行うと、悪性形質が増強することを見いだした。さらに、シアリルLe^xを高発現している大腸癌細胞にシアリダーゼ遺伝子を導入すると、他のシアリダーゼではシアリルLe^xの発現に有意の変化は見られないが、Neu4シアリダーゼでは明らかに減少し、Neu4がこのムチン分子を分解することが示唆された。今後は、癌細胞におけるNeu4の生理的標的分子を詳細に探索する。
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