研究概要 |
マラリアは最も重要な感染症の1つである。今日までマラリア制圧のための様々な試みがなされているが、殺虫剤耐性蚊の出現、抗原多型や薬剤耐性原虫の出現などによりその多くが行き詰まっている。こうしたなかで肝臓感染ステージを標的としたワクチンが注目されている。肝臓感染ステージでは以前よりガンマ線で弱毒化したスポロゾイトにより強力な感染阻止免疫が誘導できることが知られていた。また最近では遺伝子操作した弱毒化スポロゾイトによる免疫誘導が報告されている。しかしながらスポロゾイトの生ワクチンとして利用には、蚊から得られる原虫数の少なさを考慮すると、多くの困難が伴うことが予想される。一方このステージでのコンポーネントワクチン作製の試みは、特定の原虫タンパク質に限られており、その可能性が十分に引き出されているとは言い難い。本研究ではマラリア人工染色体を利用することによって、スポロゾイトと肝臓内ステージの複数の抗原タンパク質を弱毒化した赤血球感染ステージの原虫に発現させ、感染阻止免疫を誘導することを試みた。肝臓感染ステージの遺伝子CS protein,pbs36を、HSP70遺伝子上流領域を発現プロモーターとして組み込んだ人工染色体ベクター(pH70CEN)にサブクローニングした。この人工染色体ベクターは大腸菌とのシャトルベクターであり,大腸菌でプラスミドとしてクローン化した後、エレクトロポーレーションで原虫のシゾントに導入した。人工染色体が導入された原虫は人工染色体上のhuman DHFR遺伝子により抗マラリア薬に耐性を獲得した。また人工染色体を持つ原虫は、当該遺伝子を赤血球感染ステージで発現していた。今後人エ染色体を導入した原虫をマウスに感染させ、感染阻止免疫が誘導されるかどうかを評価する。
|