研究概要 |
結核に対する感染防御免疫としては,CD4+T細胞のみならずCD8+T細胞も重要な働きをしていることが知られている。これらのT細胞の感作には抗原提示細胞として,樹状細胞(DC)が重要な役割を果たす。特に,CD8+T細胞の感作にはcross-primingを行うDCが必須である。そこで,我々はDCに効率よく結核菌の防御抗原が取り込まれる「DCを標的とした新規抗結核ワクチン」の研究を行った。DCの標的分子としてCD91を用いた。これらの分子のリガンドと防御抗原の融合タンパクを作製し,分子標的ワクチンとした。そのリガンドとしては1)結核菌由来HSP70と2)Thrombospodin-1(TSP-1)のヘパリン結合ドメイン(HBD)を用いた。[結果]作製した3種の融合タンパクワクチンは何れもDCに結合することを,コンフォーカル顕微鏡で確認した。1)MPT51はBALB/cマウスに特異的CD8+T細胞を,C57BL/6マウスに特異的CD4+T細胞を誘導できるが,上記2種の融合タンパクを発現するDNAワクチンは何れもMPT51単独よりも顕著に多くの特異的T細胞を誘導できた。2)TSP-1のHBDは主量体を形成してCD91に結合するため,S-S結合の部位まで含める必要があった。3)HSP70をN末のATPase領域とC末のペプチド結合領域に分けて検討した。その結果,C末側たCD91との親和性が認められた。4)同様に,強力な細胞障害性T細胞を誘導できることがin vitro,in vivoで確認できた。
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