研究概要 |
我々は病原性真菌PAMPsであるマンノプロテイン(CAWS)ならびにベータグルカン(CSBG)のいずれもインドメタシン(IND)との併用投与により,消化管傷害を引き起こし,腸内細菌トランスロケーションによる敗血症を誘発することを見出している.このモデルにおける微生物フローラの意味をさらに明確にするため,β-グルカン/IND)誘発消化管傷害における抗生物質(imipenem(IPM),cilastatine(CS),ampicillin(ABPC))の効果について検討した.消化管傷害の指標として腸管の長さ,収縮度を比較したところ,大腸ならびに小腸のいずれもが傷害を受け短縮した.ABPC/CS/IPM処置は大腸収縮,腸内細菌のトランスロケーション,炎症性サイトカイン産生のいずれのパラメータも抑制し,最終的には生存を延長した.さらには,グラム陽性菌,嫌気性菌に効果的なスペクトルを持つLincomycin(LCM)を用いたところ,より効果的に腸管収縮,生存率を改善した.in vivo脾臓細胞培養においてLCMは炎症性サイトカイン産生を減少させた.これらの知見は,本モデルが消化管フローラに関係した炎症であり,抗生物質がそれらをコントロールし,その後の敗血症に付随する様々な現象を抑制していることを示唆している。また,LPS低応答性系統であるCH3/Hejマウスを用い,β-グルカン/IND誘発消化管傷害敗血症モデルについて検討したところ,C3H/Hejマウスにおいても,消化管傷害,微生物トランスロケーションが起こり,致死毒性,低体温,体重減少が認められた.これらの結果は本モデルがグラム陽性菌,グラム陰性菌のいずれの菌によっても惹起されていることを強く示唆するものであり,敗血症の発症メカニズムを考察する上で重要な知見を得ることができた.
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