HCVによる慢性肝炎、肝がんの発症にはウイルスの持続感染が必要である。近年、HCV感染が自然免疫機構を制御してインターフェロンの産生を抑制し、そのためにウイルスを持続感染に導く可能性が示唆されている。一方、インターフェロンを中心に進められているC慢性肝炎患者の治療において、治療に抵抗性を示す患者がどのような機構で外来のインターフェロン治療に抵抗するのか不明な点が多い。その理由として、HCV感染が、自然免疫機構を制御する全容が明らかでないこと、さらにはインターフェロン産生および抑制の制御機構が解明されていない点が多いことが考えられる。本研究者はこれまでに、HCVがインターフェロン産生抑制に働くと考えられるRIG-I経路を負に制御する生体内分子を見出してきたので、その経路における制御機構の詳細を明らかにして、生理的な条件におけるインターフェロンシグナルの制御を明らかにする事を目的とした。本研究を通して、ユビキチンリガーゼとして機能するRNF125がRIGIのユビキチン化に働き、そのことによりRNF125分子の分解が促進されることを明らかにした。さらに、このリガーゼはRIGIシグナルの下流因子にも作用してシグナル伝達を抑制させることを明らかにした。さらに、RIGI分子が翻訳後修飾として、ユビキチン化とISG15化されることを見いだしたが、これらの修飾反応の制御機構については不明な点が多かった。両修飾反応を解析して、これらの修飾反応に共通に関与する修飾酵素がISG15化されることにより、基質特異性に変化が生じる結果、RIGIへの修飾反応が異なる事を明らかにした。このことはISG15化のユビキチン化による蛋白質の機能制御の解明に向けての斬新な成果であるといえる。
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