本年度は、C3H/Heマウスに日本脳炎ウイルス(JaTH160株)を100LD_<50>腹腔内接種することにより、効率的かつ安定的に脳炎症状を引き起こすことを見出し、これを日本脳炎感染マウスモデルとして使用することとした。このウイルス接種から10日後にマウスの脳および脾臓を摘出して、それぞれのTCRレパトアを解析した。その結果、TCR VA5-1、VA17-1、VA19-1、VB2-1、VB8-3、VB13-1各ファミリーは末梢(脾臓)と比較して脳内での発現頻度が有意に上昇していた。また、CDR3 size spectratypingによりフラグメント解析を行ったところ、TCR VA5-1、VA11-1、VA18-1、VB8-3、VB13-1各ファミリーで高いclonahtyが認められた。さらに、抗原認識部位であるCDR3アミノ酸配列レベルでの発現頻度を検討した結果、TCR VA5-1、VA11-1、VA18-1、VB8-3、 VB13-1各ファミリーでは、異なるマウス個体間から、同一または類似のCDR3アミノ酸配列を有したTCRが高頻度で発現していることが明らかとなった。このことから、日本脳炎ウイルス感染マウスの脳内には、数種類の特定のTCRを有したオリゴクローナルなT細胞が浸潤していると考えられた。また、リアルタイムPCRにより、各種サイトカインの発現量を検討した結果、IFN-γやTNF-αなどのTh1/Tc1タイプのサイトカインが有意に上昇していたため、日本脳炎感染マウスの脳内の免疫反応はTh1/Tc1タイプが主体であると考えられた。
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