研究概要 |
無顎類(メクラウナギ,ヤツメウナギ)の抗原レセプターであるvariable lymphocyte receptor (VLR) は,免疫グロブリンやT細胞レセプターと異なり,leucine-rich repeats (LRR) をモジュールとして遺伝子再構成を行うことにより,10^<14>にも及ぶ多様性を作り出し,高い親和性と特異性をもって抗原に結合する.この事実は,無顎類には有顎類のそれとは原理的に異なる抗原特異的な生体識別機構が存在することを示唆しており,興味深い.本研究では,VLRが抗原を特異的に認識することに着目して、VLRのLRRモジュールを利用して,抗体の代用となる抗原認識試薬の開発を目指すことを最終的な目的としている.本年度は,飼育可能で入手しやすいヤツメウナギのVLRシステムの詳細な解析を行った.その結果,ヤツメウナギには従来から知られていたVLRA,VLRB遺伝子のほかに,VLRCと命名した第3のVLR遺伝子が存在することを見出した.VLRC遺伝子は,1) VLRB遺伝子の発現を誘導する抗原刺激を与えても発現が誘導されない,2) LRRCT領域における多様性が乏しい,などの特徴を有している.さらに,種々のヒト細胞株,アロ血球,糖鎖抗原で免疫したヤツメウナギから白血球を分離し,cDNAを作成し,ファージディスプレイライブラリーを作成した.現在,パンニングにより,免疫源と特異的に反応するファージクローンを探索している段階である.
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