「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方」について、議論伯仲の中で10月に第二次試案が出された。第三者機関の設置を医師側が求めたという端緒にも関わらず、「何か刑事罰の対象になるのかあいまいで、通常の医療行為でも処罰される恐れがある」と医学界から猛反発を受けている。その中で医と法の接点をどのように模索するかを目的として、9月に「医と法のセミナー関西フォーラム」のシンポジウム「医療関連死第三者機関検証システム」を開催された。外科医、法医、弁護士、警察庁刑事局、市民代表、刑法学者の立場でそれぞれ話していただき議論されたが、立場を相互間で理解されたという点では成功であったが、それそれの立場は譲ることはできず、結局、医療関連死のどこまでを異状死体として届出るか、医師の刑事罰をどこまで問わずに済むかといった問題の解決にはほど遠いという現状があきらかになった。英米ではコモンローの性格上、医療行為により医師が刑事罰を引けることはまずないが、日本と同様の法体系をもつドイツでは、業務上過失致死罪があり医師の刑事罰は充分ありうる。そこでドイツの解剖システム、医事紛争解決システムについて調査研究を行った。ドイツでも医療行為が原因で医師が刑事罰を受ける可能性はあるが、実際には極めて少ないことが判明した。刑法上、常に身体への傷害の事実が求められる。また身体への傷害が認められても次の4つの条件が満たされている場合には、有罪または処罰とはならない。(1)当該治療が医学的に適応とされている。(2)患者からインフォームドコンセントを得ている。(3)当該治療が医学的規則に従っている。(4)当該医療行為が倫理規範および規則に反していない。このことから、この法的条件はきわめて複雑であるが、医師が有罪となる余地はほとんどない。ドイツのシステム習うことは極めて有用といえる。
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