研究概要 |
PTX3(ペントラキシン3)は,CRPやSAPと同じペントラキシンファミリーに属するタンパク質で,申請者らはHUVEC(ヒトさい帯静脈内皮細胞)でコレステロール低下薬のスタチンにより最も発現が抑制されるタンパク質として同定し,また特異抗体の作製により,不安定狭心症で血中濃度が上昇することを見出した。Mantovaniらの研究により,PTX3は炎症の初期に自然免疫を担うパターン認識受容体としてとらえられるようになった。実際,PTX3はヒト好中球やマクロファージに高濃度に存在し,LPS刺激によって放出されることがわかった(Imamura M., et. al., Cell Immunol., 2007)。PTX3は動脈硬化症を含む様々な炎症性疾患で上昇する(Savchenko A., et. al., J Pathol., in print)が,その際原因抗原と複合体を形成し,免疫担当細胞に提示している可能性が考えられている。本研究は,PTX3に対する高親和性抗体を低ノイズ磁気ビーズに固定化して,血中のPTX3を親和性精製し,高感度のLC/MS解析により疾患特異的な複合体の同定技術を開発することを目的している。19年度は,カニクイザルのLPS刺激のサンプルを医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターから提供を受け使用した。PTX3はLPS刺激後6時間が最も高値を示すとされているが,この血漿サンプル50μlより,PTX3を主要タンパク質として精製し,質量分析計によりペプチドを同定することに成功した。相互作用しているタンパク質を2種類同定し,うち1つはMantovaniらにより2007年に報告されたPTX3相互作用タンパク質inter-α-trypsin inhibitorであり,本手法が有用であることが確認された。20年度は,さらに高感度化を図り,臨床サンプルを用いて炎症性疾患等におけるPTX3の複合体解析技術の開発を進める。この手法は,新しいマーカーの同定に役立つとともに病態に関して新規知見を与えるものと考えられる。
|