研究概要 |
本研究の目的は、急性期虚血を簡便に診断できる方法の開発である。心筋梗塞を含む心血管疾患および脳梗塞を含む脳疾患は日本人死因のそれぞれ第2位、第3位をしめる重要な疾患である。さらに重要なことは心筋梗塞によってダメージを受けた心臓は、心筋が再生しないために機能不全に陥る(心不全)と、入退院を繰り返すこととなる。また、脳梗塞により脳組織がダメージを受けると、例えば片麻痺など個人の生活の質が極めて低下するとともに、介護する家族の負担は非常に大きいものがある。これらの疾患を発症した後に残る後遺症を軽減するためには、早期診断・早期治療開始が必須であり、そのためにこれらの急性虚血性疾患を短時間で鑑別に検出できる診断バイオマーカーの開発は非常に重要である。 今回、我々は虚血マーカーとして内皮細胞から分泌されるタンパクに着目した。ADAMTS1が急性期虚血で一過性の発現を示す特異性を利用できるのではないかと考え、本研究を着想するに至った。 1.低酸素組織におけるADAMTS1の分布 低酸素状態におけるADMTS1の分布を検討するためにまずヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養し、低酸素状態(1%O2)にて1,3,6,24時間低酸素状態として、それぞれRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法にてADAMTS1のmRNA発現量を検討した。 2.ELISA系の構築 低酸素状態におけるADAMTS1の発現量を定量的に測定するサンドイッチELISAの系を構築した。まずインフォームドコンセントの得られたヒト心筋梗塞忠者の血液を収集血清分離し、血清ADAMTS1レベルを測定した。これにより、国内特許出願した。
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