研究課題
がん幹細胞説においては、がん幹細胞は腫瘍組織を構成するがん細胞の供給源である。化学療法に耐性のがん幹細胞が残存すると再発や転移を引き起こすことになるため、がん幹細胞は治療戦略上きわめて重要な標的である。ヒト神経膠腫培養細胞株などを用いて、がん幹細胞を含むside-population(SP)を分離した。ヒト神経膠腫細胞株U251を培養後、DNA結合色素であるHoechst33342(5μg/ml)で染色し、フローサイトメトリーを行った。UVレーザーの励起によって、G0/G1期の細胞(main population,MP)は450/675nmの蛍光を発したが、MPの左下方で蛍光強度が弱い領域に、角状に垂れ下がるSP細胞集団が観察された。SP細胞は、Verapamil(50μM)の前処理にて消失した。また、Herpes Simplex virus thymidine kinase gene(HSV-tk)発現アデノウイルスベクターの感染後、ganciclovir(GCV)による細胞死を誘導しSP細胞分画の解析を行ったところ、細胞死を誘導した細胞群では、GCV非投与群と比較し、SP細胞の割合が増加した。この結果から、自殺遺伝子治療における再発には、残存したがん幹細胞の活性化が関与していると推察された。また、がん幹細胞への遺伝子導入法開発の前段階として、染色体上の標的部位特異的に遺伝子を挿入する技術を検討した。アデノウイルスゲノム上のE1遺伝子における短い相同領域を標的として、核酸分解酵素およびDNA結合タンパク質を用いて相同組換えを促したところ、効率よく外来遺伝子が挿入されることを確認した。
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