研究概要 |
臨床分離細菌が産生するβ-ラクタマーゼは、保存されているアミノ酸一次配列(モチーフ)の相同性からA-Dの4クラスのいずれかに分類される。本研究の目的は、臨床分離細菌が産生するβ-ラクタマーゼを迅速かつ簡便に検出するために、クラス特異的抗体を用いたイムノクロマト法等によるクラス別検出法を確立することである。 昨年度の研究では、各クラスをそれぞれ2つのサブクラスに分けて、サブクラス毎に共通ペプチド抗原領域を設定し、2種のサブクラス共通抗原を混合して用いることにより、A, B, Cの各クラス特異的な抗クラスA/B/C抗体群を作製することができた。いずれの抗体群もそれぞれ2種のサブクラス共通ペプチド抗原と同程度に反応することが確認できておりクラス特異的抗体として用いることが可能であると考えられた。 本年度は、第一に、得られたクラス特異的抗体群について、その特異性をウェスタンブロット法およびELISA法等により検討して、イムノブロット法等の検出法への応用が可能かどうかを検討した。その結果、得られたクラス特異的抗体は、ウェスタンブロット法(変性酵素蛋白)ではある範囲内で特異的に反応するが、ELISA法(ネイティブ酵素蛋白)では、酵素のクラスによってはその反応性の弱いものも存在することから、イムノブロット法を応用してネイティブの酵素蛋白を検出するには、さらに反応条件や新たな抗原領域設定等の検討が必要と考えられた。第二に、レファレンスとしてのβ-ラクタマーゼの種類を増やすために、公開されている遺伝子の塩基配列を参考にPCRクローニングを試みた。その結果、各クラスともに産生量をある程度一定に保ったクローンを得ることができた。 本研究成果については、特許出願を第一義に考えてきたために、これまで論文発表あるいは学会発表等は控えてきた。今後も本研究を継続し、実用化が十分可能であると判断でき、かつ特許出願に十分なデータが得られた時点での特許出願を考えている。
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