研究概要 |
ウイルスの潜伏化及び活性化に伴いウイルスゲノムDNAのメチル化の割合が変わる。ヒト遺伝子の発現制御と同様にいくつかのウイルスではウイルスの活性化に必要なタンパク質の発現調節部位にメチル化が認められ、発現が抑制されることにより潜伏化していると考えられている。本研究はヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)がトリクロロエチレンによる全身性の皮膚-肝障害患者においてしばしば再活性化することに着目して、本ウイルスの再活性化はウイルスゲノムの脱メチル化により起こるという仮説を立て、研究を行った。ウイルスゲノムのメチル化の割合は再活性化に伴い最も早く発現すると考えられているIE1遺伝子のプロモーター領域及び、その上流の反復配列(R3領域)について調べた。患者の血液からウイルスゲノムを抽出し、DNA中のシトシンをウラシルに変換する反応を行った後、IE1とR3領域のみ増幅するプライマーを用いPCRを行い、その産物をsub-cloning後、シークエンスを行いメチル化の割合を確かめた。予備実験において、健常人(ウイルスがメチル化していると思われるヒト)及び培養したウイルス(脱メチル化していると思われる)をサンプルとして条件検討を行ったところ、以下のPCR反応溶液組成(dNTP,200uM;1X GC I buffer;primerluM, 500nM each;LA Taq(TAKARA)2U;template,about 100n)で、annealing温度は57℃(R3領域)or63℃(1E1領域)でPCRを行うことが最適であった。また結果はR3、IE1両領域で、培養ウイルスは健常人と比較して著しく脱メチル化していることが認められた。その後、上記患者及び治療後ウイルスが消失した同患者に対してメチル化の割合の測定を試みたが、両サンプルともPCRによる遺伝子の増幅は認められなかった。原因は不明である。
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