研究概要 |
1.放射線影響研究所成人健康調査対象者の中で炎症性疾患の罹患歴のない無作為に選出した健常者442名の血漿中活性酸素の測定を行った。その結果、性、被曝線量、喫煙状況、体脂肪率で補正を行った場合年齢10年当たり血漿ROS値2 7%(95% CI 0.3, 5.1)の統計的に有意な上昇を認めた。また、性、年齢、喫煙状況、体脂肪率で補正を行った場合、放射線1Gyあたり血漿ROS値5.3% (95% CI2.5, 8.2)の統計的に有意な上昇を認めた。ROS 値は炎症バイオマーカー(IL-6、TNF-α、CRP)、さらに炎症指標のひとつである赤血球沈降速度(ESR)と正の関連を示した(P < 0.05)。 2.対象者の顆粒球、単球、およびリンパ球中のナイーブとメモリーCD4, CD8 T細胞の細胞内活性酸素をフローサイトメーターにより測定した。対象者240名の5-(and-6)-carboxy-2', 7'-dichlorodihydrofluorescein diacetate(DCFH)を用いた細胞内H_2O_2, hydroethidine(HE)を用いた細胞内O_2・-レベルはともに単球>顆粒球>リンパ球の順で高値であった。リンパ球サブセットの中でナイーブCD4 T細胞に比べてメモリーCD4 T細胞の細胞内H_2O_2値は1.4倍、O_2・-値は1.8倍高かった。 3.放射線感受性の異なるマウス(C3H/HeN、C57BL/6J、BALB/cA)に放射線を2Gy照射後、経時的(1週間から0.5年間)に末梢血細胞、牌細胞、リンパ節細胞中のIL-6, TNF-αの細胞内m-RNA発現量の比較を行った。予備的解析からIL-6, TNF-αは照射後経時的に上昇していた。現在、照射後6ケ月以上の影響について研究を進めている。
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