研究課題/領域番号 |
19659156
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸 玲子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80112449)
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研究分担者 |
佐田 文宏 北海道立衛生研究所, 情報企画室, 主任技師 (90187154)
吉岡 英治 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70435957)
西條 泰明 旭川医科大学, 医学部, 準教授 (70360906)
神 和夫 北海道立衛生研究所, 健康科学部, 健康科学部長 (60414330)
小林 智 北海道立衛生研究所, 健康科学部, 生活保健科長 (00414285)
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キーワード | 化学物質過敏症 / Idiopathic Environmental Intolerance (IEI) / 芳香療法 / アロマセラピー / 無作為割付介入 / IEI-scale / STAI / POMS |
研究概要 |
いわゆる化学物質過敏症を疑って札幌市W医院を受診した患者全員に基本調査票の記入を依頼した。これまでに配付した18部のうち16人から回答が得られ、平均年齢は43歳±9.6、15人が女性であった。Bailerら(2006)が開発したIEI(Idiopathic Environmental Intolerance)-scaleを実施したところ、IEI-症状13.1±3.7、IEI-誘因34.8±10.6、IEI-生活への影響30.2±13.7で、いずれもBeilerらの結果よりも本研究のほうが若干高得点となった。このうち、介入に同意した11名を性・年齢グループでマッチさせて無作為にケース(前半に芳香療法)と対照(後半に芳香療法)に割り付けた。ベースライン時のケースと対照ではPOMS(気分評価尺度)の6つの下位尺度のひとつである疲労のみ対照群の得点が低かった(P=0.017)が、そのほかのアウトカムであるIEI-scaleとSTAI(不安評価尺度)に有意差は見られなかった。芳香療法前後でPOMSを実施したところ、1回目の介入では下位尺度のうち緊張-不安、抑うつ-落ち込み、怒り-敵意の得点が、2回目の介入ではこれらに加えて疲労、混乱も有意(P<0.05)に減少した。これまで化学物質過敏症については発症要因の解明や、診断基準を確立するための研究がなされてきたが、具体的な治療方法についての研究は少ない。本研究は、化学物質過敏症患者に芳香療法を実施する世界で初めての研究で、短期的であれ対象者の気分に好影響を与えることが明らかになれば、その意義は大きい。現在研究を継続中であり、今後対象者数が増えることで、短期的な影響のみならず、ケースと対照を比較することで化学物質過敏症の症状、発症要因、あるいは生活への影響に対する芳香療法の効果について明らかにすることが可能と考える。
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