研究概要 |
わが国を含むアジア諸国では欧米諸国に比べ脳卒中の発症が多く、脳卒中の遺伝要因の研究は喫緊の課題である。特にわが国では食塩の摂取量が多く、そのことが高血圧を介して脳卒中をきたす例が多いと考えられることから、特に食塩の摂取、代謝を中心とした遺伝・環境要因のアプローチが重要であると考えられる。そこで本研究では、一般集団を対象として、高血圧関連遺伝子多型を中心した候補遺伝子多型と脳卒中リスクとの関連を、遺伝-環境要因の相互作用の観点から分析し、脳卒中・虚血性心疾患発症リスクの推定を行った。 遺伝子多型の分析に同意した茨城県K町の住民3,156名(一部の多型については秋田県I町の住民1,439名を含む)を対象に、食塩感受性高血圧の候補遺伝子であるアンギオテンシノーゲン(AGT)T174M、αアデュシン(ADDI)G460W、アンギオテンシン変換酵素(ACE)I/D、G蛋白質β3サブユニット(GNB3)C825T、アルドステロン合成酵素(GYP11B2)T-344C、ベータ2アドレナリン受容体(ADR2B)G16R及びQ27E、ATP結合カセットG2サブファミリー(ABCG2)Q141K遺伝子多型について分析を行った。血圧値との関連については、全対象者の分析ではいずれの多型においても有意な関連が認められなかったが、一部の多型においては食塩摂取との相互作用が認められた(食塩摂取が多い群で遺伝子多型と血圧値との問に有意な関連が認められた)。食塩摂取と血圧との相互作用が比較的強かったAGT、ADD1のリスクアレル(またはジェノタイプ)をもつ者では、食塩を多く摂取した場合、リスクアレルを有しない者と比べ、血圧の上昇(収縮期血圧5mmHg、拡張期血圧3mmHg程度)を介して、脳卒中の発症率が約16〜21%程度、虚血性心疾患の発症率が10〜13%程度高くなると推定された。
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