研究概要 |
診断技術の進歩と予後の改善によって多重がんの発生が増加しているが、多重がん患者の生存予後については余りわかっていない。今年度は、1979年から2003年までの25年間に亘る鳥取県がん登録資料を活用して単発がん患者と多重がん患者の生命予後について比較した。 多重がん患者1,146名、単発がん患者15,022名について、罹患年齢、死亡年齢および第1がん罹患から死亡までの生存期間を求め、生存予後の比較はCox回帰による生存分析を用いておこなった。なお、多重がんの判定基準はIARC/IACRの規則に従い判定し、死亡票からの多重がんは除外した。 その結果、多重がん患者は、第1がんの罹患年齢および死亡年齢とも単発がん患者に比して1歳弱高齢であった。第1がん罹患から死亡までの生存期間は、多重がん患者は4.3年で単発がん患者の2.8年に対して1歳弱長かった。Cox回帰による実測生存率曲線の比較では、10年生存までは、多重がん患者が単発がん患者より高い生存率を示し、その後第2がんの影響で逆転した。部位別には、特に直腸、胆嚢・胆管、膵臓、肺、前立腺で同様の傾向が観察されたが、食道、胃、結腸、肝臓、喉頭、乳房、子宮では顕著な違いは見られなかった。逆に皮膚、腎など、膀胱、甲状腺では単発がん患者が高い実測生存率を示した。 以上の結果から、多重がん患者が単発がん患者より長生きすることが示唆された。おそらく、これは、第1がん罹患後の治療方法やライフスタイル(喫煙・飲酒)などによる影響が関与しているものと思われる。今後は、これらの点について検討していきたい。
|