本研究の目的は、門脈周囲への膵島移植が、膵島機能の最適化を招来することによって経門脈的肝臓内膵島移植の欠点を改善させるかどうか、さらに局所への併用療法により移植膵島の生着率を向上させるかどうか明らかにすることである。 方法:STZ誘導糖尿病マウスに、同系マウスドナーより分離した膵島400個を経門脈的に肝臓内(IP群)もしくは門脈周囲(PP群)に移植した。 結果:(1).IP群、PP群ともに随時血糖値は正常化したが、経口糖負荷試験による耐糖能の正常化に必要な期間はPP群においてIP群に比して有意に延長していた。耐糖能正常化後の血中インスリン濃度は、IP群においてPP群に比して有意に上昇しており、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRも、IP群が有意に高値であった。(2).マクロ観察において門脈周囲の移植膵島部へ腸間膜動脈分枝の流入を認めた。(3).運動負荷機を利用したが、低血糖誘発できるだけの運動負荷をかけることが困難であった。(4).徐放製剤のスクリーニングを行った。臨床使用可能なものを3種類選定した。初期評価においてGLP-1受容体作動薬のexendin-4を局所に同時移植した結果、生着率の改善を認めた(n=3)。 意義と重要性:(1)の結果より、IP群で認められる高インスリン血症がPP群では改善していた。しかし、PP群では耐糖能の正常化が遅れることが新たに判明した。(2)の結果から門脈血中ヘインスリンが分泌されている可能性が示唆され、現在、門脈周囲移植膵島の血行動態を画像的、機能的に検討中である。(3)の結果より、α細胞の機能評価のために新たな低血糖誘発法での評価を検討中である。(4)の結果より、併用療法によって(1)の結果で認められた生着率の遅延を改善するだけでなく、血管新生因子なども併用すればさらに生着・維持が促進できる可能性が示唆され、選定した徐放製剤の有効性評価とともに検討中である。
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