研究課題/領域番号 |
19659183
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡部 健二 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50379244)
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研究分担者 |
木曽 真一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40335352)
吉田 雄一 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教 (30457014)
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キーワード | ADSC / bFGF / 肝細胞移植 / 再生治療 / 肝再生 |
研究概要 |
近年、肝移植に代わる新しい治療法として細胞移植が試みられ、骨髄細胞投与により末期肝疾患患者の肝機能が改善することも報告されている。一方、脂肪組織中には骨髄間葉系幹細胞類似の細胞群-ADSCが存在し、より簡便な細胞移植治療の供給源として期待されている。肝再生療法の移植細胞供給源としてのADSCの有効性を検討するためにin vitroでのADSCの肝細胞様細胞への分化誘導、in vivoで肝障害モデルマウスへのADSC移植を行った。【方法】(1)C57BL6マウスの皮下脂肪よりADSCを分離した。メディウム中にbasic fibroblast growth factor(bFGF)を添加してADSCを培養し、4週の時点で肝臓分化マーカー遺伝子発現、albumin1(Alb)、 cytokeratin18(CK18)の免疫染色、尿素分泌能、グリコーゲン貯蔵能、LDL取り込み能を検討した。(2)GFP陽性ADSCをGFP Tgマウスより採取後、1週間bFGF(20ng/ml)添加の有無で培養したADSCを準備した(bFGF(+)ADSC、 bFGF(-)ADSC)。C57BL6マウスにCCl_4を0.5ml/kg週2回腹腔内投与し、4週の時点でbFGF(+)ADSC(bFGF(+)群)あるいはbFGF(-)ADSC(bFGF(-)群)を脾臓から注射した群と注射しない群(コントロール群)の3群で、さらに4週CCl_4を投与した。各群でマウス肝臓内のGFP陽性細胞の有無、血清Alb値を比較検討した。【成績】(1)bFGF添加群では、肝分化マーカー遺伝子の発現を認めた。bFGF群ではAlb、CK18陽性細胞へと分化しており、尿素分泌能、グリコーゲン貯留能、LDL取り込み能も誘導されていた。(2)ADSC投与群ではいずれも肝臓にGFP陽性細胞が生着していたがbFGF(+)群でより生着細胞が増加していた。また血清Alb値の改善がADSC投与群で認められたがこれもbFGF(+)群でより改善していた。コントロール群に比べ肝線維化はbFGF(-)群では増悪していたが、bFGF(+)群では改善していた。【結論】ADSCはin vitroで肝細胞様細胞へと分化誘導可能であり、in vivoでADSCの脾注により、肝臓への生着および血清Alb値の改善を認めた。bFGFによる前処置によりこれらの効果はより顕著となった。ADSCは肝再生療法の移植細胞源となりうることが示唆された。
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