これまで、新しい内視鏡機器の開発により、高度先進的な内視鏡検査と治療が可能になり、早期消化器粘膜癌に対し内視鏡的粘膜剥離術など、低侵襲性の新しい治療手技が我が国で開発されてきた。しかし、現在の超音波内視鏡や拡大内視鏡などの内視鏡機器を駆使しても、術前の消化器粘膜癌の深達度診断の正診率は約85%であり十分とは言えない。また、高度先進的な内視鏡治療には出血、穿孔などの合併症が約10%に生じ、死亡例も認められる。したがって、より安全で正確な内視鏡検査・治療のために、新たな内視鏡機器開発が必要である。 また、現在、臨床用診断装置として利用されているMRIは、X線CTに比べて高速撮像能力は劣るものの放射線被爆がない上、近年高磁場装置の開発に伴い、軟部組織の撮像法としてその地位を確立している。ただし管腔臓器に対して通常の撮像法では一般に空間分解能が十分でない。一方、他の管腔臓器の断層診断装置として超音波内視鏡が使用されており、放射線被爆が無くリアルタイムで断層像を確認できる利点があるが、病変ならびにその部位(空気が介在する部位や骨の近傍など)によっては深達度の診断が困難となることが多い。このように現在有力な低侵襲画像診断装置はその得失があるが、臨床上最も頻用される内視鏡による診断・治療をより確実にする方法として、MRIによる組織内撮像と内視鏡による組織表面撮像を組み合わせたMR内視鏡を開発することが重要である。 本研究では径3.5cmのMRコイルを用い、ブタ切除胃を撮像したところ、胃壁構造が超音波内視鏡での4層構造以上に鮮明な層構造が観察できた。さらに、生体ブタを用いたin vivo実験でも、MRコイルをブタ胃内に挿入することに成功し、切除胃での撮像と同じく、胃壁の層構造が鮮明に観察することが出来た。
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