心血管系の再生治療の方法として、これまで骨髄細胞が主に用いられてきたが、採取に全身麻酔を必要とすること、骨や脂肪への分化が懸念されることなどから、我々は末梢血単核球を用いた血管再生治療の開発を行なった。基礎実験の結果、骨髄細胞とほぼ同程度の血管再生能力があることがわかった。その後、従来の治療法では下肢切断が免れない重症下肢虚血患者に末梢血単核球を用いた血管再生治療を行ない、救肢率80%以上、疼病や潰瘍の改善率70-80%など良好な効果を確認した。その高い安全性と有効性から日本で初めて高度先進医療の認定を受けることができた。本年度は、その治療効果や長期予後についてさらに検討した。その結果、透析症例においては、その治療効果が低いこと、予後も悪いことが明らかとなった。それらに対して、非透析症例においては、閉塞性動脈硬化症とバージャー病ともに治療効果を認めたが、治療後の生存率や心血管イベントフリー率については、バージャー病の症例で有意に高かった。再発率に関しては、透析症例と非透析症例、閉塞性動脈硬化症とバージャー病の間にそれぞれ有意差はなかった。レスポンダーとノンレスポンダーの解析では、レスポンダーの生存率が高い候向にあった。今回の検討により、透析患者に対する本治療の妥当性を考慮していく必要があると考えられた。レスポンダーの生存率が高い傾向にあったという結果は、本治療の安全性を示唆している。
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