本研究の目的は、最新の心不全治療法である心臓再同期療法(CRT:Cardiac Resynchrozation Therapy)の普及に伴い顕在化してきた医療経済上の問題を克服する為、それに替わる細胞移植によるCRTの実用化をめざすことである。再生医学の進歩は循環器学の領域でもめざましく、骨格筋芽細胞および骨髄単核球細胞移植による重症虚血性心筋症患者に対する細胞移植、心筋再生による臨床治療が既に国内でもスタートしている。本研究では、この実用段階にある細胞移植療法を応用し、機械によるCRTに替わり、医療経済、QOL改善の点から優れた次世代CRTの開発を目的としている。 本年度は、不整脈発生モデルを用いて、骨格筋芽細胞を移植して非興奮部位を作成し、不整脈発生に及ぼす影響を観察した。その結果、不整脈発生は、心筋表面に直接移植用骨格筋芽細胞を注入しても、明らかな変化がないことを観察した。同様に、共同研究で移植用細胞群を組織内で集積させ、ペースメーカー機能を発揮させる試みを行った。磁性粒子をヒト骨格筋芽細胞にラベルし、新生児ラット心筋細胞と共培養した。磁石により骨格筋芽細胞をパターン化すると、非興奮部位の存在により、不整脈が容易に停止することを確認した。これらの成果は、平成21年3月の第73回日本循環器学会で発表された。移植用細胞をパターン化することが、細胞移植による不整脈停止機能あるいはペースメーカー機能を発揮する重要な要素と考え、今後の検討課題であると考えた。
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