研究概要 |
MET組織線維化の病態解明において、成人組織での分化した上皮細胞がある一定の条件下で間葉系細胞に表現型を変え組織のリモデリング・線維化に関与するという上皮-間葉細胞転換(Epithelial Mesenchymal Transition:EMT)が明らかとなってきている。一方、その線維化・リモデリングの制御のもくてきにて、間葉-上皮細胞転換(Mesenchymal Epithelial Transition;MET)、間葉系細胞のある線維芽細胞がある一定の条件下で上皮細胞に転換する(EMTの逆の過程)について検討した。前年度から引き続き、ヒト肺線維芽細胞を用いMETについて検討をした。ヒト肺線維芽細胞にBone Morphogenic Protein(BMP)-7(BMP-7)を10,100,1000ng/mlの各濃度で刺激し、48時間後に形態学的変化を検討した。全濃度において、肺線維芽細胞は細長い紡錘形の形態のままで、間葉系細胞から上皮様細胞には変化せず、ヒト肺線維芽細胞においてはBMP-7刺激でのMET誘導により上皮様細胞への転換を確認できなかった。さらに、今年度の実施計画に従い、上皮間葉転換を経由した上皮細胞由来の間葉系細胞を用いて、BMP-7刺激によるMET誘導について評価した。METを経由した細胞へのBMP-7刺激で48時間後には、形態学的に間葉系細胞が上皮様細胞となり、METの過程を経由した反応を認めた。さらに、上皮細胞のマーカーであるE-cadherin mRNAと間葉系細胞のマーカーであるvimentin mRNAの発言を検討したところ、BMP-7の刺激にてE-cadherin mRNAの発現亢進とvimentin mRNAの発現低下を認め、間葉系細胞の上皮細胞への極性の変化を認めた。しかし、BMP-7刺激のない状況でも、EMTを経由した間葉系細胞は上皮細胞へ再度転換する傾向を認めた。BMP-7によるMETと自然経過でのMETとの間に有意な差は無く、BMP-7がMETを誘導したと確認するには至っていない。今後、さらなる検討を要すると考える。
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