研究課題
グレリンは胃で発見され、成長ホルモン分泌刺激作用を有する新規ペプチドである。機能解析により、摂食亢進や抗炎症、心血管保護など多彩な作用が明らかになってきた。グレリンの臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチが世界中で実施され、慢性心不全、神経性食欲不振症、癌のカヘキシアなどで臨床的有効性が証明されている。本研究では、グレリンを炎症性呼吸器疾患へ臨床応用することを目的に、体重減少をきたした慢性下気道感染症7名に対してグレリンを3週間朝夕食前2回経静脈投与し、気道炎症の抑制効果を検討した。いずれもBMI<21と体重減少をきたし、膿性痰の持続と緑膿菌の気道感染をきたしていた。グレリン投与により、摂食亢進と体重増加を認め、血清蛋白やアルブミン、内臓蛋白が増加した。喀痰量、喀痰中の好中球や炎症性サイトカインが低下し、血中CRPや可溶性ICAM-1が低下したことから、グレリンの抗炎症作用により、気道炎症が改善したと考えた。肺炎の合併や血圧低下などの副作用はなかった。本研究の成果から、慢性下気道感染症に対してグレリンは栄養状態の改善と気道炎症の抑制に作用し、治療応用が可能と考えられた。グレリンを用いて、培養気道上皮細胞、培養血管内皮細胞におけるLPSのサイトカイン発現誘導を検討したが、直接の抑制作用は認めなかった。グレリンは迷走神経を介して食欲亢進をきたすことから、抗炎症作用も間接的な効果である可能性が示唆された。本研究の成果は欧米誌へ報告した。
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