研究概要 |
本研究では、T細胞の活性化を端緒とした免疫応答が慢性副鼻腔炎の発症・病態形成に深く関与していると仮定し、副鼻腔粘膜炎症局所に浸潤したTリンパ球のT細胞受容体(T cell receptor;TCR)レパトア解析により抗原特異的免疫応答の有無を解析することと、慢性副鼻腔炎病変部における免疫学特徴と組織内サイトカインプロファイルの関連性を解析することを目的とした。慢性副鼻腔炎に関与する抗原特異的免疫応答に対する研究手法としては、獲得免疫系の主体であるT細胞の全TCR遺伝子を同一条件下で増幅し、生体内の発現頻度を反映させることができるAdaptor-Ligation-PCR法によるTCRレパトア解析法を用いて検証を行った。平成20年度までに臨床サンプルの採取およびTCRレパトア解析は終了しており、各患者で異なる偏りを持つTCRレパトアを形成していたことより、これまで報告されていた慢性副鼻腔炎へのスーパー抗原の関与は認めない結果となった。 顎口腔領域におけるスーパー抗原の関与をより精査するため、同手法を用いて口腔粘膜疾患疾患においても解析を行った結果、本研究の慢性副鼻腔炎とは異なりスーパー抗原もしくは自己抗原の存在の可能性を見出した。(論文発表:Gotoh A,Hamada Y,Suzuki R,et al;Clin Exp Immunol 154(2):192-201 2008.) 現在は、本研究で得られた知見をもとに慢性副鼻腔炎におけるT細胞の活性化を端緒とした免疫応答に関して論文作成中である。
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