我々は昨年度までに、遺伝的にレプチンシグナルを欠損するob/obマウスやdb/dbマウスにおいて、一側尿管結紮(UUO)による腎尿細管間質障害が軽減すること、少量のレプチンを脳室内に投与することによりob/obマウスで認められる腎保護効果が消失することを見出している。本年度、その分子機構を明らかにする目的で、以下の検討を行った。中枢神経系を介するレプチンの骨代謝調節作用は神経ペプチドCARTを介することが報告されているため、CARTKOマウスを用いてUUOによる腎障害を惹起したところ、野生型マウスと明らかな差異を認めず、レプチンは骨代謝調節とは異なる経路で末梢の炎症を調節することが示唆された。また、単球走化性因子fMLPを含有するマトリゲルを用いて、in vivo matrigel chemotaxis assayを行った。すなわち、ob/obマウスの皮下にマトリゲルを留置すると、野生型マウスと比較してF4/80陽性細胞の浸潤が有意に抑制され、ob/obマウスに対してレプチンを中枢投与することにより、浸潤細胞は有意に増加した。この際、骨髄におけるF4/80陽性細胞の比率はレプチン中枢投与により変化しなかった。一方、UUOによる腎ケモカイン発現の亢進は、野生型マウスと比較してob/obマウスにおいて有意に抑制されていたが、レプチンの中枢投与により明らかな変化を認めなかった。以上の研究成果より、中枢神経系を介したレプチンの炎症反応調節作用の標的細胞として単球が重要であることが示唆された(論文投稿中)。
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