研究概要 |
10個のzincフィンガーを持つ核内因子Sall1は腎臓前駆細胞集団である後腎間葉に発現し、かっこのノックアウトマウスは腎臓を欠損する(西中村らDevelopment,2001)。腎臓発生に関わる新たな遺伝子を探索するために、Sall1の遺伝子座にGFPをノックインしたマウスを作成した(高里らMech.Dev.,2004)。このマウスの後腎間葉をFACSで採取してマイクロアレイ及びin situ hybridizationで候補遺伝子を抽出し、さらにノックアウトマウスを作成することで、腎臓発生に必須な遺伝子KIF-kを同定した。本研究はこの遺伝子による腎臓形成の分子機構を解明することを目的とする。KIF-kノックアウトマウスは出生時に腎臓を欠損するが、後腎発生当初から尿管芽の侵入障害がみられ、その後間葉が細胞死を起こす。この症状はSall1欠失マウスと類似しているが、Sall1をはじめとする主要遺伝子の発現開始は保たれていた。間葉を単離しWnt4の刺激下に培養すると、上皮化が認められ、間葉から上皮への転換過程にはKIF-kは関与しないことが明らかになった。現在、間葉自体の増殖能及び液性因子を介した尿管芽の引き寄せ能について検討を重ねている。KIF-kが繊毛やShhシグナルに関わる可能性、細胞骨格に沿って何かを運んでいる可能性、及びSall1との遺伝学的関係も解析中であり、新たな腎臓形成機構を明らかにしたい。
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