研究課題
われわれは筋ジストロフィーに対する新規ブースター療法の標的として、創傷治癒促進形質MRL-MpJに注目した。MRL-MpJマウスは常染色体劣性遺伝形式を示す責任遺伝子未同定の自然発症変異マウスで、全身の創傷治癒促進を表現形質とする。本研究では、MRL-MpJ創傷治癒促進形質が筋ジストロフィーにおける筋細胞の壊死・再生に及ぼす治療効果を解析し、新たな筋ジストロフィー治療戦略の標的となりうるか検討した。Duchenne型筋ジストロフィーモデルmdxマウスとMRL-MpJマウスを交配し、F2世代でMRL-MpJ/mdxの二重変異マウスを作出し、骨格筋の組織病理学的および生化学的解析と緊張力測定を行った。mdxマウスと比較してMRL-MpJ/mdxマウス(6週齢および14週齢、n=7)の骨格筋(大腿四頭筋および横隔膜)では筋線維断面積と中心核繊維の割合が有意に増加していた。また筋組織における線維化を含む間質の面積とハイドロキシプロリン含有量は有意に減少していた。したがって、MRL-MpJ形質はmdxマウスの筋再生を促進すると考えられる。さらに、MRL-MpJ/mdxマウスでは摘出した骨格筋張力にも改善がみられたことから、MRL-MpJ形質は筋ジストロフィー治療の新たな標的になると結論された。
すべて 2008
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Acta myologica 27
ページ: 19-24
医学のあゆみ 226
ページ: 402-407