研究課題/領域番号 |
19659230
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
藤井 聡 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90291228)
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研究分担者 |
吉岡 成人 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (20200941)
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キーワード | メタボリックシンドローム / NKT細胞 / 糖尿病 / 炎症 / マクロファージ / 免疫学 / 内科 / 遺伝子 |
研究概要 |
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、T細胞抗原受容体とナチュラルキラー細胞の表面抗原を同時に発現しており、メインストリームのT細胞とは異なる特異なT細胞亜群である。CD1d分子により提示される糖脂質を認識して炎症性サイトカインを放出し、生体内で極めてユニークな役割を果たしているものと考えられている。我々は動脈硬化を生じやすいApoE欠損マウスを用いた検討で、NKT細胞が動脈硬化病巣の進展に促進的に働くことを世界に先駆けて明らかにしてきた。しかし、メタボリックシンドロームにおけるNKT細胞の関与については不明である。メタボリックシンドロームにおけるNKT細胞の役割をマウスを用いて検討した。8週齢C57BL/6(B6)マウスと、NKT細胞が著減するβ_2-microgloblin欠損(β_2m^<-/->マウスに高脂肪食(脂肪21%、コレステロール0.15%含有)を12週間投与した。高脂肪食を投与したマウスは同週齢の普通食を投与したマウスに比べ著しい体重増加を認めた。しかし、B6マウス群とβ_2m^<-/->マウス群間では有意な差は認めなかった。これはB6マウス・β_2m^<-/->マウスともにオス、メスともに同様の結果であった。またマウスの空腹時の血漿の血糖値(FBS)および空腹時のインスリン値(IRI)は、メスで両群間に差を認めなかった。しかし、オスではB6マウス群にくらべてβ_2m^<-/->マウス群で低下していた。また、高脂肪食投与9週後に採取した随時尿中微量アルブミン値は、オスでB6マウス群にくらべてβ_2m^<-/->マウス群で有意に低下していた。したがってオスB6マウスに高脂肪食を負荷することで、体重増加・耐糖能異常・微量アルブミン尿の増加が確認された。これらはいずれもヒトのメタボリックシンドロームで生じる形質である。β_2-microgloblin欠損マウスを用いた検討により、NKT細胞はメタボリックシンドロームの発症・進展に寄与することが示唆された。今後はさらにNKT細胞欠損マウスでの腹部脂肪での炎症が軽減しているかどうか、またマウスにNKT細胞を活性化するαGCの投与で腹部脂肪の炎症が増強するかを検討していく。さらに、微量アルブミン尿は腎機能異常の早期マーカーのみならずメタボリックシンドロームの一翼を担うと考えられておりNKT細胞と腎障害の関係についても解明していきたい。
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