メタボリックシンドロームの病態形成に脂肪組織の慢性炎症が注目されている。リポ多糖類LPSは動脈硬化を促進し、IL-4を産生するNKT細胞を増加させる。我々はすでにapoEノックアウト(KO)マウスでNKT細胞が動脈硬化を促進することを報告している。今回、NK細胞とNKT細胞の協調について検討した。抗asialo-GM1抗体によりapoEKOマウスでNK細胞を減少させるとLPS投与による動脈硬化症の促進は抑制された。したがってLPSやLPSを産生する細菌はNKT細胞の活性化に続いてNK細胞と協調することで動脈硬化を促進すると考えられた。 一方NKT細胞が耐糖能異常の発生に影響するかを検討するためNKT細胞が欠損しているβ2ミクログロブリンKOマウスに高脂肪食を摂取させた。体重や腹部内臓脂肪蓄積は野生型B57Cとβ2ミクログロブリン欠損マウスで同程度であった。しかし、β2ミクログロブリン欠損マウスでは腹部脂肪のマクロファージ浸潤が減少し耐糖能異常は有意に改善した。また、NKT細胞の活性化作用をもつα-ガラクトシルセラミドの投与により高脂肪食摂取後の耐糖能異常および脂肪組織へのマクロファージ浸潤が有意に悪化し脂肪組織でのサイトカイン発現パターンも変化した。よって食事により講される肥満では、脂肪組織での炎症性変化や耐糖能異常の発生にNKT細胞が重要な役割をはたしている可能性が示されたされた。 NKTハイブリドーマ1B6と2E10はともに生理活性脂質であるS1Pの受容体(SIP1、SIP2、SIP4)とスフィンゴシIIンキナーゼ(sphk2)を発現していた。発現しているS1P受容体の種類はNKT細胞と同じであった。特に1B6はS1P刺激によって耐糖能異常の発生に重要な役割を果たす炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子TNF-αの発現を増加させた。今後S1P刺激による他のサイトカイン産生への影響を明らかにしたい。
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