転写コアクチベーターであるPGC1αの既報の第一エクソンの15Kb上流に存在する新規な第一エクソンから転写が開始される親規なスプライシングバリアント(PGC1αb)を同定した。この新規なスプライシングバリアント(PGC1αb)の機能の解析を行った。以前からの検討によりモデル動物の骨格筋では運動依存性にPGC1αbの発現が増加することを見出していたが、健常ボランティアの骨格筋生検サンプルの解析によりヒトにおいても運動によりPGC1αbの発現は著しく増加することを見出した。また、PGC1αbのプロモーター領域の解析を行い、転写因子MyoDやMRF4が直接結合して転写を活性化することを見出した。また、転写因子CREBもPGC1αbの遺伝子転写に関与するが、この機構にはCaMKIVやカルシニューリンA、またp38MAPKキナーゼMKK6などのシグナルが関与することも明らかとなった。また、個体レベルでのPGC1αbの生理的機能を解析するため、新規第一エクソン特異的な遺伝子欠損マウスを作成して検討を行ってきたが、本マウスは高脂肪食摂取による肥満に対して抵抗性を示したものの、複数の臓器で既知のPGC1α発現が低下していることが明らかとなった。これは本マウスの作成時にPGC1αb特異的第一エクソンをネオマイシン耐性遺伝子に置換したが、ゲノム上のネオマイシン耐性遺伝子存在により15Kb下流の既知の第一エクソンに影響が出たものと考えられた。そこで、ゲノム上のネオマイシン耐性遺伝子を除去した新規な遺伝子欠損マウスの作成を行った。この新規な遺伝子欠損マウスは、PGC1αbの発現は完全に消失しているものの、既知のPGC1αの発現には全く影響がないことが明らかとなり、PGC1αbの固有の機能の解析が可能と考えられた。現在、この新規遺伝子欠損マウスの各種の代謝状態の変化を解析中である。
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