研究概要 |
1)ヒトPTHrP遺伝子の転写を、ビタミンD、E2、DHT、デキサメサゾン、T3、プロゲステロンがいずれも10nMの用量で、ホルモン投与後6-8時間をピークとする時間経過で約1/2程度抑制することを、ヒト乳癌MCF7細胞株を用いた半定量的real-time PCR法で確認した。AtRA、9-cisRA、troglitazone投与では同様の条件下で、同遺伝子転写は2倍以上に促進された。2)各ホルモン(E2、DHT、デキサメサゾン,プロゲステロン)のアンタゴニスト、選択的DNA-PK拮抗薬NU7026、そしてTSAはいずれも上記のPTHrP遺伝子転写抑制をほぼ完全に解除した。3)DNA-PKおよびHDAC2のSiRNAを導入した場合、さらにDNA-PKの調節ユニットであるKu80のアンチセンスDNAを導入した場合にもまたこの転写抑制が解除された。4)RAR、RXR、PPAR_γ以外の各種核内受容体蛋白(VDR、ER_α、AR、GR、TRβ1、PR-B)は、それぞれのホルモン依存的にDNA-PK蛋白およびHDAC2と結合することをIPウェスタン法で確認した。5)ChIPアッセイでPTHrP遺伝子上流のnVDRE領域に、上記の核内受容体、DNA-PK、HDAC2がいずれもホルモン依存的に動員されることを確認したが、その時間経過はこれらの転写(共役)因子ごとに独自のパターンを示した。以上のことから、核内受容体を介したホルモン存在下での遺伝子転写抑制には共通のクロマチンレベルでの分子機構が機能していることが解明されつつある。
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