研究概要 |
抗モエシン抗体がどのシグナル伝達経路を介してTNF-α分泌を誘導するかを明らかにするため,細胞表面にモエシンを発現している白血病細胞株THP-1や末梢血単核球に,患者面清から精製した抗モエシン抗体を添加し,TNF-α分泌経路に関与するキナーゼ(ERK1/2,p38 MAP,c-JNK)阻害薬を添加レてその影響を調べた。また,抗モエシン抗体のFabフラグメント,F(ab)_2,FcγR阻害剤を加えてTHP-1からのTNF-α産生が低下するか否かを検討した。THP-1に抗モエシン抗体を添加するとERK1/2キナーゼが時間、用量依存的にリン酸化されERK1/2やSykキナーゼ阻害剤は用量依存的に抗モエシン抗体によるTNF-α分泌を抑制した。一方,p38 MAPやc-JNK阻害剤にはこのようなTNF-α分泌抑制作用はみられなかった。また,F(ab)_2フラグメントを添加した場合THP-1からのTNF-α分泌はintact抗体添加の場合の約60%であり,Fabフラグメントの添加ではTNF-α分泌はみられなかった。次に,抗モエシン抗体のFc部分の機能に着目してFcγR阻害剤を添カロしたところ,抗モエシン抗体によるTHP-1からのTNF-α分泌は60%抑制された。また,モエシン特異的shRNA添加によってTHP-1表面のモエシンの発現は抑制され,抗モエシン抗体添加によるTNF-α分泌は41%減少した。一方,LPS添加によってTHP-1表面のモエシン発現は増強され,抗モエシン抗体によるTNF-α分泌促進も44%増加した。以上の所見から,抗モエシン抗体をTHP-1に添加することによってFcγRやモエシンのcross-linkingが生じ,その結果SykやERK1/2経路が活性化されることによって,単球系細胞からTNF-αが分泌されると考えられた。
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