本研究では、ホルモンやサイトカインでの骨代謝調節と、造血免疫システムへの影響について検討している。本年度はビタミンD受容体欠損(VDR-/-)マウスの定常状態における骨髄造血能が正常であるというHI9年度の結果を踏まえ、造血システムに負荷がかかった際の骨髄の反応を検討している。まず、造血幹細胞動員剤であるサイトカインG-CSFをVDR-/-マウスに投与すると、野生型に比べ造血前駆細胞の末梢血への動員が低下していた。競合移植の系を用いた6ヶ月にわたる検討で、更に未分化な造血幹細胞レベルでも動員効率が低下していることが示された。一般的にケモカインCXCL12の骨髄での低下が造血幹・前駆細胞動員のメカニズムであるとされているが、VDR-/-マウスにおいてこのケモカインの蛋白レベル・mRNAレベルがG-CSF投与中どういう推移を示すのか現在検討中である。また同様の実験で、骨組織内のCXCL12蛋白の抽出と定量も検討予定である。更に、骨代謝マーカーとして骨芽細胞活性を反映する血清オステオカルシンの測定が現在当ラボでも可能となり、野生型とVDR-/-マウスにおけるG-CSFによる動員にて、これらがどう変化するか検討中である。 これらの知見と今後のメカニズムの解明によって、研究目的である造血システムにおける骨代謝、特に活性型ビタミンDを中心にしたホルモン調節の機構が明らかにされ、活性型ビタミンDやその受容体を標的とした造血制御のための分子標的薬の開発に重要な基礎データとなると思われる。
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