悪性リンパ腫や慢性リンパ性白血病などのB細胞性腫瘍は、正常のB細胞の各分化段階に応じて発症する造血器腫瘍である。我々はこれらB細胞性腫瘍において、その源となる腫瘍性幹細胞を同定・純化し、腫瘍性幹細胞を直接対象としてB細胞性腫瘍の発症機構を解明する。さらに腫瘍化へと導く遺伝子や、腫瘍性幹細胞に発現される表面抗原を明らかにすることで、B細胞腫瘍性幹細胞を直接標的とした根治的治療の開発を目指す。悪性リンパ腫と慢性リンパ性白血病(CLL)の臨床検体および患者骨髄をマルチカラー・フローサイトメトリーを用いて解析し、正常造血と対比させ、新たに増殖している分画群を純化する。これらの純化した細胞群を免疫不全マウスNOGを用いてin vivoでのB細胞腫瘍の再現効率を評価している。現在までの検討では、CLL末梢血腫瘍細胞中には未熟なpro-B/pre-B細胞のフェノタイプを示すCD34^+CD10^+CD19^-IL-7R^+分画が少数ながら存在しており、CLLの幹細胞候補と考えられた。しかしながら、これらの細胞分画をNOGマウスに移植しても、ヒト造血細胞の生着は認めなかった。しかし患者骨髄CD34^+CD38^-幹細胞分画を異種移植したところ、すべてのNOGマウスでヒト骨髄系とリンパ系細胞の生着を認め、正常造血幹細胞を移植した場合と較べて、ヒトB細胞集団が相対的に増加しており、そのB細胞は正常造血では認められないCLLに特徴的なCD5^+19^+細胞をマウス内に認めた。この細胞集団は、患者由来CLLと同一のIgH遺伝子再構成パターンを示した。以上の結果よりCLL幹細胞は、当初想定していたpro-B/pre-Bよりも、さらに上流の造血幹細胞レベルまで遡れる可能性が生じて来た。マウスはリンパ球増殖性疾患前段階ともいうべき病態を呈しており、現在は移植したマウスを長期間に渡って追跡している。さらにCLL患者骨髄由来のCD34^+CD38^-造血幹細胞分画をさらに細分化して、CLL幹細胞の純化を進めている。
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